百日紅の咲く寺

百日紅の咲く寺。

いま百日紅の花をよく見かけますがサルスベリを見ると18歳の時に読んだ福永武彦の「草の花」を思い出します。

「私はその百日紅に憑かれていた。それは寿康館と呼ばれている広い講堂の背後にある庭の中に、ひとつだけ、ぽつんと立っていた。寿康館では、月に一回くらい、サナトリウムの患者たちを慰問するために映画会が開かれた。しかし私は、まだ病状がすっかり恢復していたわけではなかったから、そこに映画を見に行ったことはない」という書き出しで始まる青春の鎮魂歌というような小説の冒頭に出てくる百日紅。

百日紅?さるすべりとカナがふってあったので読めた。どんな樹なんだろう?と植物図鑑で調べた。ああ~、これが百日紅かぁ。見たことある!僕はこの福永の小説によって百日紅をしっかり認識したました。そして百日紅が夏の陽射しを浴びて輝いている光景を見ると、ここに描かれたはかなく崩れやすい青春、孤独な魂の愛と死を思いほろ苦い青春が甦るのです。

0コメント

  • 1000 / 1000